柿本知子
柿本知子
Tomoko Kakimoto
number
03
記憶
Memories
衣服、それは肌を暑さ寒さ、害虫等様々な外的要因から守る機能を持った物であると同時に、自らの立場を示したり、アイデンティティーを表す物でもある。人は生まれてから自我を表現するまでは、周りの者が選んだ服を「着せられる」だけだが、成長するにつれこだわりが生まれ「選ぶ」様になる。我が子も、初めは親好みの渋い色合いや洒落た形の物を着せていたが、やがてキャラクターがプリントされた物やカラフルな物を好んで着る様になった。子供は自己表現をし、親はそれを受け入れる訓練の様であったし今もその最中にいる。しかし、それら自己表現の小さな積み重ねを行う事こそが、己を形成していく為の大切な歩みなのだろう。その様な日々の試行錯誤、葛藤、また健やかな成長を祈る思いが詰まった物が、乳幼児期に子が着ていた衣服である。その衣服を裂いて織る事で、当時の記憶を追体験した物がこの作品である。

柿本知子
Tomoko Kakimoto
我が子の健康と成長を願い、身に纏わせてきた数々の衣服。ボロボロになるまで着て処分した物もあれば、お下がりでもらってもらった物もある。その中でも、私自身が気に入って大切に取っておいた物や、最近まで着ていた物を解体し、再構築して甦らせる試みです。